加藤特許事務所

所長の業務雑感


所長の業務雑感

加藤特許事務所所長の業務雑感を掲載いたします。特許出願等をご検討されている方は是非ご一読ください。

 

特許取得費用は高い

特許を取るのには高額の費用がかかります。

具体的には、特許出願を弁理士に依頼した場合は特許を取るまでに通常70~80万円ほどかかります。これは、特許出願手続が“一品生産もの”であり、しかも一件一件の処理に多くの時間を要するからです。弁理士が決していい生活をしているわけではありません。

とはいえ、このように高額の費用がかかるので、それ以上に利益を生み出すことが期待される発明でなければ特許を取る意味がありません。

弁理士を通さずに出願人本人でも特許出願手続はでき、その場合は費用は大幅に安くて済みます。しかし、特許出願手続に慣れていないと、特許を取れたとしても、抜け道(特許の範囲の漏れ、特許の穴)ができてしまい、他者に容易に特許を回避して実施されてしまいます。したがって、十分な利益を生み出すことが期待される発明については、費用をかけてでも弁理士に特許出願手続を依頼する方が得策です。

 

特許の使い道

特許は自社の事業を開始し、維持し、発展させるのに役立ちます。

一方、特許を取って、自分では事業を行わずに、他者に特許を売ってあるいはライセンスして儲けようと考える人がいます。

しかし、特許を買ったりライセンスを受けてくれる企業はなかなか見つからないものです。特に、個人の特許に関してはその傾向が強いです。

結局、特許取得費用を回収できないことが多くなります。ですから、自分で事業を行う予定がない場合は、“特許貧乏”とならないように注意が必要です。

 

弁理士に特許出願を依頼するコツ:抜け道のない特許を取るために

弁理士は概してまじめです。依頼者の発明について、抜け道なく特許を取れるように一生懸命特許の範囲を考えます。

しかし、発明者以上に当該技術分野について知識があるわけではないので、どうしても抜け道ができやすくなります。

抜け道ができると、他者に特許を回避して実施する余地を与えてしまい、特許製品の独占販売によって得られるはずの利益が得られなくなります。せっかく特許を取ったのに、他者に特許を回避して実施されて痛い目を見たという話をよく聞きます。回避実施をやめさせるために裁判に訴えることもできますが、たとえ勝ったとしても裁判費用は高額であり、中小企業では裁判費用を回収するのは容易ではありません。

特許の抜け道を防ぐためには、弁理士に出願を依頼するときに、完成した製品・技術を説明するだけでは不十分です。その製品・技術の、特許を取りたい中核部分について、思いつく限りのバリエーション(変形例)を提案してください。ここでいうバリエーションとは、完成した製品・技術そのものの構造と同等の機能が得られる代替構造です。

製品を買う需用者は、機能を求めて買うわけですから、同等の機能が得られるのであれば、高価な特許製品でなく安価な特許回避製品でいいわけです。そのような回避実施を防ぐためにバリエーションが役立ちます。

バリエーションは例えば、「ここの形は丸でなく四角でもいい」「この部品はこちら側でなく反対側に付けてもいい」「ここは固定することなく引っ掛けるだけでもいい」等です。

弁理士は、バリエーションの構造を含むように言葉を選んで特許の範囲を創作します。結果、抜け道のない強固な特許の取得を目指せます。

 

拒絶理由通知を受けた場合の出願人の対応について

特許出願の審査では、いきなり特許査定(特許する旨の審査官の最終処分)されるケースは少ないです。

出願当初は特許の範囲を広く請求するため、通常、拒絶理由通知(許可できない旨の審査官の心証開示)が一度は出されます。拒絶理由通知での審査官の判断は特許を取れる最大限の範囲を見極めるヒントになります。

特許出願中に類似製品が市場に出現した場合に、その類似製品を特許の範囲に確実に取り込むように特許の範囲を修正する機会にもなります。したがって、拒絶理由通知が出されることは、特許の範囲を出願当初から狭く請求していきなり特許査定されるよりも望ましいといえます。

特許出願に慣れていないと、拒絶理由通知が来た段階で「もうダメだ」と諦めてしまう人がいますが、むしろここからが本番です。

このとき、拒絶理由通知に対する対応(特許の範囲の修正、審査官の判断に対する反論の申立)を弁理士任せにする出願人がいますが、これは好ましくありません。というのは、弁理士は特許の範囲をどのように狭めれば特許を取れるのかを判断するのは得意ですが、他者による回避実施の方法を見つけるのは出願人(発明者)の方が得意だからです。

他者による回避実施を防ぎつつ特許が認められるように特許の範囲を狭めるという対応が要求されます。ですから、特許の範囲を修正する場合は、弁理士任せにせず、弁理士が提案した修正案で回避実施を防げるかどうかをよく確認し、納得できるまで弁理士と協議して修正内容を決めてください。

また、審査官の判断が不当と思う場合は、なぜそう思うのかを弁理士によく説明してください。審査官も弁理士も気が付いていない所にその発明の優れた点があり、その点を審査官に理解させることにより、実質的に特許の範囲を狭めることなく特許される場合もありますので。

 

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